シチリアと巨人たち
まず、私がその緻密で知的な所産に憧憬せざるを得ない、かの松岡正剛氏設立の工作舎から出版されている 「キルヒャーの世界図鑑」を紹介したい。
この著書は荒俣宏に「ダ ヴィンチ以上」と言わしめたルネサンス最大の幻想的科学者アタナシウス・キルヒャーの膨大な業績を、140点余のオリジナル図版で紹介した全311pの大著である。
(1986年初版 訳者 川島昭夫 解説 澁澤龍彦(!)/中野美代子(!!)/荒俣宏。)
その内容は一見今日の私達にとっては極めて幻想的で神秘的なイラストを多用し、その研究結果も現代科学においては かなり奇異で実証的でない考察が多すぎるように見えるが、
その第一章の小題が象徴するように「科学と神学の断層」にあったルネサンス最末期の17世紀初頭においては 私にとってむしろ興味深い 産業科学以前の純粋なる物質科学の産声にも見える。
そして純粋なるルネサンス人であるがゆえに「ただひとつの画期的発見もない」(本文)という彼の業績だが 東洋研究、地質学、医学など幅広い分野においてパイオニア的研究が数多く 残されているのも事実であり 今日の評価が決して色あせない理由になっている。
当時のヨーロッパの科学者ならだれでもそうであるようにドイツ生まれのキルヒャーもやはりイタリアとは関係が深かった。
1635年に偶然たどり着いたローマの神学校では神聖文字の研究を委託され
1636年にはシチリアにて自然科学の新たな領域を踏査、1638年には地球内部の構造を調査するためにナポリのヴェスーヴィオ火山の噴火口を調査している。
その後1664年には一連の地質学研究をまとめた「ムンドゥス・スブテラネウス」(『地下世界』)を出版するのであるが
この中にシチリアの巨人について言及している部分があり 大変興味深いので抜粋してみたい。
これら巨人中最大のものは、1401年にシチリア島のトレパノ(おそらくトラーパニ)に近い洞穴で発見された。ボッカチオがそれを伝えている。立ったときの高さは200キュビットもあっただろう。(中略)これに比べればゴリアテは身のたけ13フィートの矮人(わいじん)だ。
200キュビットというと1キュビットは約0.45mなので・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90m
90メートル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続く
by tre-lumache
| 2011-04-22 03:14
| 巨人伝説